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まぁ、助けの神さんですよね。トラックが通った。
こうやって手を振ったら、止まってくれちやったんです。
兵隊さんが子どもを帯からといて先に乗せておいて、
そして私を二人か三人かで乗せてくれたんです。抱えて。
トラックへね。毛布ひいて、そこに寝せてくれたんです。親子。
助けの神さんじゃな、ありがたいのう思うて手を合わせてね、
私は拝〈みました。見ず知らずの人に、こういう。
そしたらね、子どもがね、顔をこうやってね、みるみるね。
『父ちゃんね、父ちゃんね?』言うたのが、
兵隊さんが、あー思うてね、『あー僕の父ちゃん兵隊さん?』言うたら、
『うん』て言うたんです。そいでね、うなずいたんですよ。
そしたら『あぁそうかそうか、元気でおれよ、死ぬなよ。
元気でおれよ。父ちゃんすぐ戻るけんのう』言うてからね。
『うんうん』言うてからね、うなずいたんです。
それがまぁ向こうの人に、私らに情〈けかけてくれたんだと思うと。
子どもはこまいしね。とうとう助からずと。
『母ちゃん、父ちゃんは?母ちゃん、父ちゃんは?』言いよったです。