その掩体壕(機関車の防空壕〈)の陰から 可愛〈いおかっぱの嬢ちゃんが走ってきて 『おじさん、弟診〈てやってちょうだい』と。 掩体壕〈の陰に幼稚園にあがるかあがらないぐらいの可愛〈い息子さんが 火傷〈うけて、お尻を掩体壕〈に降ろして手を前に突き出して ぶら下げるような格好して。ひょっとみると左の目ですね。 結局目のあった所から15センチぐらい目の玉がぶら下がって、 鼻の下のほうに眼球がぶら下がっている。 それを見てもこちらも気が立っておりましたけど、 『診〈てくれ』てその嬢ちゃんが、お姉さんが言われても、 私ももちろん眼科医でもないし、医者でもないし、 眼球を指つまんで元の眼窩〈の中収めて それで済むもんでもないことも分〈かっとるし。 その時には本当にそのお嬢さんと坊ちゃんとどうしていいか、小さいながら。
そのことが未だに念頭離れませんので、毎年8月6日の夕方、 お参りするときには心の中で、嬢ちゃん、坊ちゃん辛〈かったでしょうね。 おじさんこらえて(許して)くださいね |