家に近づくその道路に一歩入った時にね、 偶然にもね、妹に会えたわけですね。 妹たってね、妹の影はないわけです。妹の顔はなくてね、もんぺのね、 いつも着ている服の模様でね、妹じゃないか思ったわけですね。 それで私が『あんたは、ちよこじゃないか?』と声をかけたら 『お姉ちゃん』て飛びついて来たわけですね。 『あんたは ちよこか?』って何べんも聞きましたら、 『ちよこじゃ』って言うて。『お母さんは?』って言うたら、 『お母さんは知らん』って言うんですね。
今まではどうしてたかというと、 先生が『川へ逃げろ、川へ逃げろ』って言ったって。 それで川へ行ってたって言うんですよ。 今まで川におったんだけど、川の水が満潮になったんですね。 川が増えて、おる所がなくなった。みんながこっちへ歩いてるから、 みんなの後ろに付いて歩いてたと言うんですね。
私を見るまではまだ目はまともに明いてたんですけどね、 私を見た瞬間から目も見えないように腫〈れ上がってね。 口も腫〈れ上がって。とにかく私にすがりついて、 『眠たい、眠たい』言うんですね。 寝たら死ぬるから『寝たらいけん、寝たらいけん』と言うても、 どうしても『眠たい』言うんですよ。 |