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証言054
8月6日
一歩逃げては振り返り
当時14歳
どうにもならないんですよ。
私の家の下の材木にも火が
着
〈
つ
〉
きましてね、
下からまあ、声の限りに、
叫
〈
さけ
〉
んでるわけですよね。
『ホラー、死ぬわ、足の方へ火が
着
〈
つ
〉
いて来たから』、
『どうにもならないんだよ』って云って、
最後には泣き
崩
〈
くず
〉
れましたね。
『姉さんわるいけども、どうにもならないんだ、
勘弁
〈
かんべん
〉
してくれ』って云って。
……おまえは、……、どうにも、一歩逃げては振り返り、
一歩逃げては振り返りねぇ。
8月6日が来ると、何か怨みの声が聞こえて来る様で…
(
嗚咽
〈
おえつ
〉
)