それが地下壕の上へ、建物が潰〈れたもんですから、 その地下壕〈の中の、奥の方に居る人や、 小使室〈の方でマゴマゴしてる女達や、 小使いのお年寄り夫婦なども、皆、生き埋めになったわけ。 下で『助けてー、助けてー』 『誰それさん助けてー、お母さーん!!』と云う声が 地底から聞こえるんです。 それを助けようにも道具が無い、つるはし一つ、何も無い訳〈です。 一瞬になくなってしまった。 それがもう、皆、逃げ切れないわけです。
ところが間もなく気が付いた時、辺り木材が、 全部火を含んでおって、火災となった。 その熱気が、今度は我々の身体へ反射しまして、耐えられなくなった。 『とり巻け!』と、もうこれ以上は我々も共死にすると、 火に囲まれてしまった、と。 皆…、皆、念仏〈を唱〈えよ! という事で、期せず、自発的に 『南無阿弥陀仏〈、南無阿弥陀仏〈』と云って、 生き残りが下で地底で泣き叫〈ぶ『助けてー、助けてー』と云う、 その、食い入る様な、後髪引かれる様な気持ちで… |