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証言042 | 8月6日 | 赤ん坊はまだ母親の死んだのは知らないで | 当時24歳 |
逃げてくる人達見たら、全身ヤケドなんですよ。
着物一枚も着けてない。
シャツ、パンツも着〈けてない人達も居るんです。
頭のテッペンからつま先まで真っ黒になって、
その人達やっとそこへ逃げて来て、バタンと倒れてたら、
そのままもう息絶〈えて、そういう死人がバタバタバタバタ重なって、
もう段々、段々、段々山になって行く。
そのうちに今度は、母親が半裸体〈で赤ん坊抱いて走って来た。
そこへ、比治山〈の下まで来たらパタッと倒れて死んで、
母親はそれなりもう息絶〈えてしまった。
赤ん坊はまだ母親の死んだのは知らないで、乳房〈さぐって、泣く。
ヤー、こんな小さい子も逃げて来る。
全身ヤケドの人達は苦〈しいもんだから、ゴロゴロ転がって歩く。
皮剥〈けて赤肌が出る、それに砂つちが着〈くでしょ。
イヤイヤ悲惨〈で悲惨〈で、まず地獄っていうのはアレだと思ったですな。
死ななければ地獄は見られないんだろうけれども…