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証言041 | 8月6日 | 水、肩へ足かけてもぎ取った | 当時31歳 |
誰が連れてきたかわからんけども、
腹のデッカイ人、大八車に乗ってあったんだ。
お産しちゃったんだよ、その身体でさ、母親がね。
生まれたばかりの赤ん坊、片手で抱いてさ、……格好でもさ、
……赤ん坊ホンギャホンギャと泣いてたっけな、
とっても見られなかったな、
どっちも死んじゃったけどさ、車の上で。
私ら疎開〈する、のだったからさ、水筒さ、水満タンにしてあったでしょ、
水筒提〈げたままさ、救助してたでしょ。
足押さえられちゃったもんな、『水くれ!』ちゅう訳〈だ。
やったのさ、(水筒)はずしてね。
したら、こんだ、その辺にいた同じ負傷者が寄ってくるんだよ、
こう、這〈いながらさ、そしたら…、上級の兵隊が来てね、
後ろから、ブン殴られるわけだ。
『負傷者に水与えたら死んでしまうから取り返えせ』、という意味だったらしい。
仕方ないから、肩へ足かけてもぎ取ったなぁ。
あのあたりから、気がおかしくなっちゃった、すっかり。
人間というか、単なる動物みたいに…