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証言035 | 8月6日 午前 | 貸してくれ云うたって見た目がね | 当時46歳 |
ほしたら雨、降りだしたよの。それが真っ黒いんが。
おかしいのー思うよったら、何がアンタ、川向こうから
何百人、何千人の人がこっちへこうやって歩いて来るんですよ。
それが皆、裸で、焼けたり何たりしてね。
ボロが焼けて溶けたように、皮がむしれて、
その中に水が、雨が降っとるけ、水が入るでしょうが。
皮の中に水が入って、こうやりゃザーッて水が落ちるようね。
それが、入る、上がる、上、土手……上がってくる人間は
『水くれ、水くれ、水くれ、水くれ』唸〈っとるんだね、皆。
『水くれ、水くれ、水くれ』云うちゃバタバタ、バタバタ倒れよる。
ハー、スゴイ人じゃのー、中にはトタンを持って、
雨降っとるから、こーやって裸になったような者も居る。
布団〈を被〈た者もおるのぅ。
さぁ、年頃〈42〜3の女の人が、女の人じゃろ思うんじゃが、
ズルズルや、頭なんか髪一本も無い、ズルズルで何も無い。
8月6日でも『寒い』云うてな、濡れて、普通の雨じゃないんじゃけん。
『小父〈さんすまんが、フトンちょっと貸して下さい』云うて、
貸してくれいうたって見た目がね、ズルズルでしょうがい・・