こう、つろうて(連れだって)ね。 どっちから逃げようかね、逃げる所が無いけん、 『早く、何でもえぇ、物一つ拾いなさいっ』云うてね、 私は垂木を1本持って、他の者、皆、垂木〈を下げとりました。 中には真っ裸で、子供を背な負〈うとっちょった人もおりました。 子供はもう死んどるのにね。私の後ろにおって…。 それが屋根が、(こういう風に)倒れとるんですよ。 しょうがないでしょ、屋根も、棟〈を歩かにゃならんから。
ほいで下からね、『タスケテー!』云うての声が、この耳の中に、 八年くらい退〈かなんだ。 その声が、何とも云えん、その…、 家がなんぼにも(こういう風に)なっとるですけんね。 『タスケテー、タスケテー!』云うてんですがね… 助ける事やない、自分が身が逃げるのが一生懸命〈。 屋根の棟〈をこうやって叩〈いてね、 丈夫そうな所を渡って這〈う様にして逃げたんですよ。 それなのに『奥さん助けてー、子供が、子供が』、 『アンタ今どうにもなりゃせんじゃない、 早う前になっと抱いてやんなさい』って、 死んどる者を負〈うとってんでしょ… |