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証言026 | 8月6日 直後 | 持ち上がらないんですよ、女の力では | 当時29歳 |
それで見たら、ゴーゴーゴーゴー見渡す限り火の海なんですよ。
その火が家の方に向かって燃えて来ましてね。
それに、立ってる家が無いんです、一軒も!
それで、それを掻き分けながら、
裸のまま、子供のことを、横に抱〈えて出たんですよ。
そのまま手を血だらけにして、掻〈き分け掻〈き分け出たんですけど、
その所の梁〈の下に、お隣の小母〈さんが挟〈まっちゃってるんですよ。
『助けて、助けて!』云うんですけど、助けてやりたいと思っても、
手が、掻〈き分けて出るのに手が血だらけでしょう。
助けてやろうと思って、子供をそこの上に、
瓦礫〈の上に置いて梁〈を持ち上げるんですけど、
持ち上がらないんですよ、女の力では。
そのうち、ゴーゴー燃えてきますでしょ。
熱い風がビューっと、こう、ふる(吹く)んですよ。
だから『ごめんね』って云ってすぐに太田川〈の土手の上に逃げたんですよ。
沢山〈居ましたね。どうしてあげる事も出来ない。
『助けて、助けて!』ってあっちでもこっちでも泣いてても、
それをどうしてあげる事も出来ないなんて、
こんなむごい事があるんでしょうかね、ホントに…