この痛いので気が付いて、そして起きよう思うたら、
辺りは真っ暗でしょ、おかしいな、……
カンカン照りの所、ワシャ歩いてきたはずじゃが、
暗くなったのは、ひょっとしたら、ワシャ死んどるじゃあるまいか、
こういうこと考えた。
死んどるにしちゃ、今までの状態の意識が変わらんのじゃがのぅ、
死んでもやっぱり人間はこんな意識があるのじゃろうか、
いう(こと)しばらく考えた。ほいじゃがね、
いつまでみても暗いでしょ、仕方ないから目つぶってさっとったんです。

今度は目開けて見たら、今度は大夕立おおゆうだち の雨が降りますね、降って地面に
しぶきが上がるでしょ、あーいう風な状態で、
青い火がパラパラ、パラパラ上から落ちて来る。不思議な事やね。
これはいよいよワシャ死んだんじゃ、死んだらよくいう
鬼が火の車引っ張って来る事は、よー聞いとるが、
あれじゃな、確かにワシャ死んだんじゃ。
もう死んでも生きててもしょうがない、ねえ?
思うてあきらめて見とったんですがね、
そいでもまだね、人間の意識があるんですなぁ。
この青い火を見とったら、目が悪うなりゃせんじゃろうか、いう意識があって、
目をつむって又しばらさっとる。時間は、ながかったです。
今度目を開けて見たら、火は消えて、やっぱり暗いでしょ、
どういうこっちゃと考えた。
そして駅の方向見ましたら、雲が少し薄くなり、パーっと明るくなってね…

広島駅の廃墟(川本俊雄 撮影/広島平和記念資料館 提供) 

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